■旦那もジルなんだ・冷■
ここは世界の危機に瀕しているさなかにも唯一形をとどめている安全な場所。云うなれば、カルデア。
この世界に唯一のマスターが、たくさんのサーヴァントを召喚した。
そして、マスターの部屋に呼ばれていないサーヴァントは部屋の持ち主がいない空き部屋に配置されていた。
「つぶらな瞳のキャスター殿。私は少し疑問に思うのですが、その……部屋の外にかけられている名札についてです」
「私もあまり難しい日本語は判りませんが、一つしかかけられていませんね」
「そう、サーヴァントが2人3人居る部屋には名札のようなものが複数かけられているのです」
「均整ととのった顔立ちのセイバー殿。あまり気になさらないほうがいいのかもわかりませんな。こういうのネタバレとかありそうじゃないですか」
猟奇的な顔立ちのキャスターと、整った顔の色男セイバーがマグカップで冷たいほうじ茶を飲みながら雑談をかわしている。
彼らは部屋の外に付いた名札を解読しようとはしなかったが、『旦那』という漢字二文字の名札が一枚そこにかけられていただけである。
「さて、時間になりましたよキャスター殿。じゃんけんをしましょう」
「もう消灯の時間ですか。手短に勝負しましょう」
「じゃんけん、ぽん……」
セイバーは握りこぶしを突き出し、キャスターは指を大きく広げていた。グーにパーなので、キャスターの勝ちといったところか。
「また私の負けですね、あまり激しくなさらないでくださいね……ハハハ」
「クフフ……激しいほうがお好みだったはずでは?」
おもむろに2人の旦那は席を立ち上がり、ベッドの上で足をくずして向かい合って座る。
キャスターは腕を伸ばしてベルトから鎧へ順番にセイバーの服を脱がしていった。
「いつも思うのですが、こう、父親に世話をされている子供のような気分でして、結構ここら辺で興奮してますよ」
「フフッ、おもしろい話ですね。私も子供は好きですよ、なんならそういうプレイでもしましょうかな?」
「いいえ。いつも通りがっついてむさぼってください。くれぐれも激しくなりすぎないように……」
上着、ズボン状の服、下に着ていた薄手の白い上下の服。順番に脱がされていくと、セイバーは仰向けになるように言われた。
「裸体が美しいですね。まるで彫刻。このまま観察しますから適当にカラダを撫でてみてください」
キャスターはジロジロとその体を眺めて、いつもより余計に目を丸くさせていた。
セイバーは自分の体をさすって、キャスターを見つめ返して恥ずかしそうに笑った。
「も、もう。あまり気持ち悪い顔をなさらないでください……ゾクゾクしてなんだか寒気までしてきた」
「ああ失礼。私は興奮すると超マジキチ最高COOLゼロキャスタースマイルになってしまう癖があったのを忘れてしまってましたよ」
「いいえ。夏場は助かります」
キャスターはクスクスと笑いながら自分の服をマントから順番にゆっくり脱いでいった。
「ではでは本格的にお触りをしましょう」
「そうしてもらえれば」
起き上がって愛撫。
まずはセイバーのほっぺたをさわさわと撫でる。そして、目を閉じたところで唇を指でそっとくすぐって、一気に口付けた。
やわらかい男同士の唇があわさり、すこしの唾液が互いの唇を濡らした。
「ン、フフ。いかがかな」
「この気持ち悪さ……すごくそそります。なにかいけないものに汚されている感じがたまらない」
「ではもう一度……」
今度は首を傾けて深めにキスをする。そして、チロチロと舌を使って、セイバーの口の中をいやらしくいじめた。
口の端からはねっとりした唾液がこぼれて、おもわず気分がフワフワとしてきたセイバーは、キャスターの体にもたれかかった。
「からだ、つめたいですね……きもちい……」
「私は特殊なカラダですからね、よしよし」
「きもちわる……でも、きもちいっ……」
小さな声で可愛く鳴く綺麗なセイバーに心をときめかせながら、今度は後ろ向きに膝の上にのせてやり、足を開かせて本格的な愛撫を始めた。
ほんの少し硬くなってまっすぐになった大事な部分を特徴的な左手でゆっくりさする。
「そんなにぐったりしてどうしたんですか。最後までできそうにありませんかな?」
「汚されている自分に酔っているんです……はぁぁぁ……」
「そんな私のことを汚いとか気持ち悪いとか言わないでもらいたいですね。でも今は特別ですよ?」
キャスターは自分の悪口もセイバーが興奮しているからだと割り切って、愛撫を続けた。
「はぁぁぁぁ……きもちいい……ああ……おゆるし、ください……」
「イキたい?」
「あ……! は、はっ……んんぅ……くあ!! ぁ……ぁ……」
あ、あ、という小さなうめき声が上がる度に、トクントクンと白い液体が溢れ出る。
それを絞り出すようにキャスターは手でしっかりと根元から上へこすりあげてやった。
セイバーはしばらくよだれをたらしながらクタッとしてにやついている。
それをキャスターはゆさゆさとゆすって声をかけた。
「陶酔してる場合ですか。ちゃんとやってください。やりなさい、受けフェラ」
「あ……はい。今度はじゃんけんで勝ちたいですね」
セイバーは正気を取り戻したようにしっかりと喋るようになった。
そしておもむろにキャスターはベッドに仰向けになり、くつろぐような姿勢をとった。
「好きにやっていいですよ。強いのも甘めに噛むくらいなら結構」
「……太さ、同じくらいですね。長さはキャスター殿のほうが長いようです」
セイバーは慣れたような雰囲気で口を使った愛撫を始めた。先端を唇ではさんでついばんだり、根元や袋をべろりと舐めたり。
やはりじゃんけんで負けつづけていると、そういったものも巧くなるのだろうか。
「フ……クク……もういいですよ。私は本番もやりたい気分でいて……」
「……一番の濃いものを私にくれるのですね。ちなみにどういたします? 騎乗スキルも少しだけできますよ」
「なら一回戦はそれで。次は私が覆い被さる形でしましょう」
セイバーがベッドの横においてある小さな瓶をとる。そして、蓋を指で回して開けると、キャスターに渡した。
「塗ってください。私のカラダの中までしっかり塗り伸ばして、滑りをよくしておいてください。」
「ほう。では手短にしてあげますね」
すると、キャスターは枕元においてあった本を手に取って、触手を召喚した。
「……っひ! 普通に塗らないんですか!」
「中までとなると、どうしても爪が長くて無理そうでしてな。フッフフ」
触手の中でも比較的細いものを使って潤滑剤をしっかりと塗り伸ばす。
「やめ……はやく」
「はいはい。どうぞ約束どおり騎乗してください」
召喚された触手はセイバーの身体の中から抜けてどこかへいった。
ほっとしたところでようやくキャスターの上に騎乗ることができたのだった。
「うっ! は、はいりましたよ……ではしっかりと息を合わせてください。私の騎乗はプロには劣ります。息を合わせてくださいね」
とろけていたセイバーの顔が急に真顔になる。瞳は据わっている。美麗な騎士の顔になった。
「おお……まるで私と一体に……犯しあって、犯されあっている、のか……」
キャスターはその時思った。昨晩セイバーを後ろから責め立てたとき、代わりに、騎乗してもらえばもっと気持ちよかったのかと。
「どうです。どうです。キャスター殿。私は褒めたいです。こんなにピッタリと息が合っていますよ。相性がいいみたいですね」
「もう……何も……くうう……」
「それでいいです。キャスター殿の腰つきがいいので、私も軽くなったような錯覚を見ていますよ」
セイバーが腰を落とすと、キャスターが気持ちよさに腰を浮かせようとして、セイバーの腰が上へあがる。
キャスターはすぐ腰が布団のほうへ落ち、セイバーは零点数秒ずらしながら合わせるように腰を落とした。
「い、い……くう……いく……いく……」
「おや。涙の流しすぎでお顔が綺麗になっていますよ。ああ。中でこぼれてますね……大丈夫ですか、二回戦」
キャスターがしばらく泣きじゃくっていたのでセイバーはそれを見下ろしながら泣き止むのを待った。
そして、キャスターは目をこすり、いつもの顔に戻る。ゆっくりと結合したまま正常位へ体位をかえた。
「久しぶりに顔が変わってしまいましたね。では激しくセイバー殿を責め立てて汚してあげますので」
「意外と体力がありますね。どうぞ……あっ」
キャスターは腰を激しく使って、奥にある一点を何回も突いた。突き立てる度に、さらに奥へ入り込んでいった。
「おおっ、ううん、んおっ」
「あっ、くる、きてる、はぁぁぁ、きてるうっ! おゆるしください、おゆるしくださいっ」
セイバーは再び崩れた口調になり、何度も同じ言葉を繰り返し、まるで壊れたおもちゃのようだ。
大事な男性としての部品は白濁をたらし、時折透明な液体を勢いよくとばしていた。
これは当然だが、性行為はリードされる側のほうが気持ちいいようだ。
「セイバー殿……私がイクまで続けますよ……」
「そんな、そんな、そんな、おゆるしください、おゆるしください、ああ!」
「ジルドレェぇぇェェぇ!!」
最後に二人は無意識に自分の名前を叫んだ。それは今まで知らなかった互いの正体、真名だった。
互いに自分の名前を呼ばれ、凍てつくような涼しさを感じた。
「なかなかCOOLな思いをしましたよ。過去の自分を好き勝手に汚してましたから」
「私のほうがぞっとしましたよ。堕落した自分に欲情していたのですから」
「どうしますか」
「お互いがわかったところでいつも通りやっていきましょう。何が好みかもなんとなくわかってきました」
「ところであの名札」
「旦那もジルなんだ、ということにしておきましょう」
旦那もジルなんだ・冷 おわり 旦那もジルなんだ・温へ続く
もどる